【北。仲間存在。否、我嫌悪……】

「あーと、嫌いな奴だけど北に仲間の気配を感じると、そゆ事?」

【智之正解】

 いまいち理解し辛いフォイヤーの言葉を何とか解読して、一同は精霊の感じるままに北部地方へとやって来ていた。

「気温変化ありすぎー!」

「この間まで暑いって騒いでたくせに……いちいち煩い奴だなぁ……」

「でも事実―!」

「確かにな……」

 リドスが智之の愚痴に納得してしまうのは、雪こそ降っていないが、降って来ても驚かない様な寒さが、この地方にあったからだ。

『寒い』ではなく、もはや『痛い』の域に達している。

「あ、街だー!」

 やっとの事で家の明かりを見る事が出来た。と言っても街とは程遠く、集落と言った方が適切だろう。

 しかし、これで凍死を恐れながらの平野野宿から解放される。

「よかったーよかったよ〜」

「取り合えず人を捜さないとな……」

 喜びまくっている智之の横で、一樹が冷静に辺りを見渡す。と、集落の中心に回りの家より一回り大きな建物があった。 

「あそこが長の家だな」


 ここが石盤を守る街でも、そうじゃなくても、一晩の宿を借りるには、代表者に話をつけるのが一番だ。

 コンコン

 木で出来た扉をノックすると、声もなく扉が開かれた。

「お入りなさい。鍵となりし者達よ」

 扉から現れたのは、今まで会った長老の中では一番年老いた男だった。

 その男の言葉から、ここが石版を守る村だと言う事を知る。

「中に入り、体を暖めると良い。話はそれからにしよう」 

 無表情ながら、男の言葉からは優しさが感じられた。

 智之と一樹の二人は、やっと長老らしい長老に会えたなー、と妙な感動を覚えていた。