| 立 | 
        
          
            | 「それじゃ、行って来ます」 
 何があるか分からない洞窟に挑む為、松明の燃料、ロープ、つるはし、火薬、テント、食料、水。その他治療用の薬一通りと、やたら大荷物になってしまったが、五人で分担して背負い、長とアテナに挨拶をする。
 
 「無事、帰る事を祈っている」
 
 長の言葉を受けて、集落から離れ様とした時、遠くで爆発音のような物が聞こえて来た。
 
 「なんだ?」
 
 「魔物と、誰かが戦っています。あれは、地の洞窟のそば…」
 
 音のした方を向きながら呟く一樹の言葉に、答えを返したのはこれから一緒に洞窟に向かう集落の若者だった。
 
 この若者は僅かながら遠見の術が使える。
 
 「今、あの場所には誰も居らんはずだ」
 
 長の言葉に若者は、戦っているのは誰なのか、確かめる為、術に集中する。
 
 「白銀の、髪を持つ子供……」
 
 虚ろに呟くその言葉に反応したのは長と、そしてアテナだった。
 
 (白銀の髪……シールの小僧も確か……)
 
 周りには悟られない程度だったが、アテナの表情が硬くなる。
 
 (でも、あれから150年経ってる。あの小僧の筈がない……)
 
 自身が異世界に飛ばされた時の事を思い出し、怒りが蘇る。
 
 「サルース…」
 
 「え?」
 
 長から漏れた聞きなれない言葉に、智之が聞き返す。
 
 「はっきりと姿を見た者は居ないと言われているが、永遠に少年の姿で魔物を封印し続けていると言う、シール一族の生き残り、サルースと言う子供も、確か白銀の髪だった筈」
 
 「シールって、封印の一族だよね?」
 
 「ああ、探す手間が省けたな」
 
 智之の言葉に、一樹が返す。
 
 ひとまず先に石版集めの旅に出てしまったが、カオスを倒すとなると、シールの生き残りや、封印の呪文を持つ賢者達を探さなければならなかった。
 
 賢者や聖者は、割合多くの手掛かりが残っているので探すのは容易いだろうが、シールの事だけはどの書物にも殆ど残っていなかったのだ。
 
 「本当にシールの生き残りなら、ここで鍵が来ている事を知らせ、共に戦うと良い。早く現場に向かえ」
 
 「はい!」
 
 長の言葉に、五人は駆け足に近い速度で歩き出した。
 
 先に進む五人を見送りながら、アテナの表情は険しい物へと変化していた。
 
 (シールの小僧…サルースが、永遠の命ですって? どう言う事なの? カオス様があの後再度封印されたのは分かった。でも、サルースの命の長さは一体……? 秘蹟は、人間の力では無理。カオス様が力を与えなければ死なない体等……)
 
 例えカオスが力を与えたのだとしても、理由が分からなかった。生かしておいて、百害あって一利無し、一体どう言うつもりなのか?
 
 (それでも、私はカオス様を信じるだけ……カオス様の理想を、願いを適える。きっと……)
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