なんだ? ここ…… 白い、何も無い…

【魔族だ!】

【逃げろ! 殺されるぞ!】

 子供? あの魔族、まだ子供じゃないか

【逃げないで! 俺、ただ魔族以外の人と話してみたいだけなんだ!】

【信じられるか! 魔族は皆汚いやり口で俺達を殺す!】

【魔族など、村に入れる訳にはいかん!】

【信じてよ!】

【出てゆけ!】

【誰か!】

【近付くな! 魔族め!】

【誰か俺の話を聞いてくれー!】


 消えた… なんだったんだ? 今の……ん? また違うのが見える

【魔族は闇の力…人は光の力。その違いが受け入れられないのか? なんで補い合おうと思わないんだ?】

【闇など、誰が受け入れたいものか!】

【我々は闇の力に弱い。お前等だって光の力には弱い筈だ。己の脅威が近付いて来たら、逃げるのが当然だ】

【戦う気等ない! 人間と共存を望む魔族だって大勢居るんだ!】

【共存して、裏切らない保証が何処にある? 我等に何の利点がある?】

【あるのは恐怖だけだ】

 これは……もしかして、カオスの記憶?同化したから、奴の記憶が見れるのか……?

 しかし、この世界の住人はなんで魔族を省く方向でしか考えないんだ? 魔族の方が歩み寄っても、これじゃ意味が無いじゃないか……

【色々な知識を身に付けて、人の役に立てれば、他の魔族だって受け入れてもらえるかもしれない】

 その知識と魔力が、余計に人を怯えさる結果になった……

【異世界の人間を仲介に入れれば、話が出来るかもしれない】

 それでシール一族の事を知ったのか……

【人間と戦いだって?! そんな事をしたら… え? 住処が襲われて、全滅?】

 先に手を出したのは……人間なのか……

【今は闘おう。この戦いが済んだら、もう一度話し合いから始めるんだ。その為には異世界の人間の協力が必要だ】

 そして、戦いは長引いて……

【人間…敵…異世界へ…異世界へ行く…】

 強い魔力のせいで、カオスはいつの間にかトップに立たされて、今の邪王軍の基盤が出来た……

【力を……もっと力を!】

 そして、カオスは壊れたのか……

 長い期間、闘っているうちに、目的を忘れたんだな……

 あれ? なんだ? サルース?

『うあぁあ!』

『不死とは言え、ここまで傷付ければ暫くは動けんだろう』

 サルース! 切ってるのは、俺?! 違う、カオスか!

 あ! 記憶の方の映像が、消えてく……

 光? サルースに刺さってる部分から、光が……

(一樹…)

 呼んでる……

 そうか、今はカオスの意識の中。
 俺の自我を取り戻さないと死んじまう

『動けないのは、貴様も一緒だ』

 くっそぉ、どうやったら自我を取り戻せる?! 強く念じれば良いのか?!

『智之!』

 剣が、来る!

『起きろ! 馬鹿一樹―!』

 ばっ…! 馬鹿だと?!

「お前に言われたくねぇよ、馬鹿智之!」


 目を覆うほどの眩い光が一帯を包み、影と言う影が、一切消えた。

 光の光量が収まり、やっと目を開ける事が出来るくらいになると、地に伏している一樹の姿が目に入る。

「一樹……一樹! おい! 目ぇ開けろって! 一樹!」

 触ると、まだ脈が感じられるが、その鼓動に合わせて、大量の血液が流れ出て行く。

「智之、一先ずオーミターションへ運びましょう。扉は開けっ放しです。
 この傷では最大治癒魔法でどうにかなると思いますが、今の私の力では難しい。ドライとフィンに手伝って貰わないと……」

「わかった。戻ろう」