トラブル

『と言う訳で、皆様からのリクエストと投稿でお送りしました『卒業』特集
3年生諸君並びに3年に思い入れのある後 輩諸君。
如何だったでしょうか?
おもわず涙ぐむ、何て情緒のある人は少ないと思うけど
『卒業するんだ』と言う事を改めて各々受け止めたんでは無いでしょーか?
かく言う私も卒業生。
中学最後のパーソナリテティとなる訳でして
物悲しい気持ちでいっぱいです!
しかぁし中学の放送は優秀な人材が揃った後輩達に任せて
進学先の高校でも放送部入るつもりなので
進路同じ皆様はこれからもよろしくねーってことで
第21年度3学期昼の放送を終わります。
パーソナリティは五十嵐弥生でした! SE YOU AGAIN!』

そして数週間後

「卒業生、退場!」

 進行役の声と共にスローバラードが流れ出す。

「…え、ちょっと……」
「この曲……」
「DーSEYZの『優しい光』だ!」

 一瞬にしてざわめきが起こった。

「大森先生! これは一体・・・?」
「私はちゃんとメンデルスゾーンの『歌の翼』をセットした筈・・・」
「誰だ! 退場曲すり替えたのは!」
「う、牛崎先生! まだ保護者も居るのに!」

 他の教師が止めるのも聞かず、怒鳴る牛崎の視線が、一人の生徒に止まった。

「五十嵐! お前かぁ!」
「やば、バレた…」
「まだ帰るな五十嵐! 卒業生だからって容赦しないぞ!」

 二組と言う自分のクラスを利用して、さっさと帰ってしまおうと思っていた五十嵐は牛崎のその声に慌てて逃げ始めた。

「先輩! 逃げて、逃げて!」
「こ、こら、2年生! 退きなさい!」

 五十嵐を追う教師陣の前を参列していた二年生が身をもって塞ぐ。

「やってくれたなぁ五十嵐!」
「我慢してたのにSEYZの曲で泣いちゃったじゃんよ! 五十嵐のアホー!」

 逃げる五十嵐に次々と卒業生席から声が掛かる。

「何? 泣いた! 狙い道理な奴だなー」
「うるさいなぁ。高校でも楽しませてよ?」
「お、同じなの? よろしく〜!」
「待て五十嵐!」
「おわっ! 牛崎さん自ら・・・・・・」

 雑談に逃げ足が緩んだのがまずかったか、もう真近まで教師達が迫ってきている。

「逃げろ、五十嵐!」
「言われずとも!」
「五十嵐! こっちこっち!」

 保護者席からOB達が手招きしているのが見える。どうやら逃げ道を作ってくれたようだ。

「こらぁ! 人海作戦とは卑怯だぞ!」
「俺等が押さえてる間に逃げろ、逃げろ!」
「皆様協力感謝! 先生ごめんねー」
「待ちなさいっ! って…あーあ。帰えっちゃいましたよ……」

 多くの生徒とOBの協力で無事逃げ切った五十嵐は足早に校門を潜って最後の最後まで騒がしく卒業していった。

「あいつ何処の高校行くんでしたっけ?」
「近くですよ…うちの向かい側にある高校……」
「さらばだ! 器材と予算の少ない公立中学校! そしてぇ、待ってろよぉ! 器材と予算の多い、私立天馬高校!」





馬高校
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